心臓病を理解しよう

生まれつきの心臓病

このHPでは、大人になって治療が必要になるか、大人になって症状がでたり診断された先天性心疾患についてお話します。よって新生児期、幼児期に見つかって早期になんらかの治療、手術を必要とする複雑心奇形は省略させていただきます。以下の疾患について述べます。

 

心房中隔欠損症(ASD)

心室中隔欠損症(VSD)

エプスタイン奇形

動脈管開存症

肺動脈狭窄症

バルサルバ洞動脈瘤破裂

 大動脈縮窄症

 

心房中隔欠損症(ASD)

 

心臓には4つの部屋がある

 

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心臓は全身で使われた血液を回収し、肺に送り肺で酸素化した赤い血液を再度心臓にもどし全身に送る臓器です。心臓は強力な筋肉でできたポンプですが、正しい方向に効率よく循環させるため4つの部屋でできています。右房、右心室、左房、左心室という4つの筋肉の部屋です。まず全身で使われた血液は主に上半身から上大静脈、下半身から下大静脈を通して右房にたどり着きます。右房から三尖弁を通って右心室に行きます。右心室から肺動脈弁を通って肺動脈に行き、肺に到達します。そこで、呼吸している肺で酸素を取り込み赤い血液となって、肺から肺静脈を介して左房に到達します。左房に入った血液は僧帽弁を通じて左室に入り、大動脈弁を介して大動脈に出て行きます。このように4つの部屋は隔壁があり、左右の心房心室は混じることなく、また弁を介して一定方向に流れるようになっています。

 

 

心房中隔欠損症とは

 

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右心房と左心房の間に穴があいている生まれつきの病気です。本来混じりあうことのない右房と左房の血液がまじり、心臓そして肺に過度の負担のかかる病気です。血液は左房から右房へ流入するため、右心室から肺に送られ左房から左心室へと全身にいく血液が再度右房に逆戻りします。そのため、右房、右心室そして肺への血液の流れが多くなり、右房、右心室、肺動脈への負担が多くなります。穴の大きさによって新生児期に重症化して緊急手術をするものから、一生症状なく過ごすものまであります。

 

原因は

生まれつきのものです。遺伝的な証明はされていません。

 

頻度は

生まれつきの心臓病の3分の1が心房中隔欠損症で、女性に多い(男性の2,3倍)と言われています。

 

心房中隔欠損症の症状は

心房中隔の穴の大きさによってその程度が変わってきます。5mm以下の穴であれば心臓にほとんど影響なく無症状の場合が多いです。2cm以上であれば心臓、肺にかなりの負担があり、運動時呼吸困難、息切れなどの症状が見られます。しかし、生まれてから心房中隔欠損に慣れた心臓のため無症状(自覚がない)のこともあります。通常は運動時の息切れ、動悸、風邪をひきやすい等です。

ひどい場合 : 呼吸困難、チアノーゼ(まれです)、全身の浮腫(まれです)を認めます。

 

病院にかかる必要は

まず、検診で心房中隔欠損症の可能性がある場合、小さいときに心房中隔欠損症と診断された場合はかならず一度は病院に行って診断を受けることをお勧めします。息切れ等の症状がある場合ももちろん早めに医師に相談したほうがいいでしょう。無症状でも定期的に検査(心臓超音波検査、レントゲン検査、心電図検査)をすることをお勧めします。

 

病院での診察、検査は

まず、お話を聞かせていただき、診察をさせていただきますが、それだけでは診断できません。心房中隔欠損症に特有の心雑音(Ⅱ音の固定性分裂、収縮期雑音)がありますが、それだけでは診断は不可能です。その後、心電図検査、レントゲン検査、心臓超音波検査をさせていただき、心房中隔欠損症の診断そして程度の診断を行います。さらに、手術が必要な場合は、手術したほうがいいかどうか迷う場合、心臓カテーテル検査を行います。

 

心電図で何がわかる?

心房中隔欠損症は右房、右心室、肺に過度に多くの血液が流れ、負担をきたす病気です。よって心電図では右心室負荷所見(右軸変位)、心房細動、右脚ブロック等の所見が見られますが、心房中隔欠損症に特有というわけではありません。さらに上室性期外収縮、発作性頻脈、心房細動も起こりえます。もちろん正常心電図の患者も多く、心電図だけで心房中隔欠損症を診断することは不可能です。

 

胸部レントゲン検査

スクリーニング、心臓、肺の状態を大まかに見るのに役立ちます。右房、右心室を含めた心臓の拡大、肺における肺動脈の拡張等が見られることがあります。この拡大、拡張の程度をレントゲンで見て、おおよその心房中隔欠損症の程度を推測することができます。

 

心臓超音波検査で何がわかる

心臓超音波検査で心房中隔欠損症を証明することができます。これが最終の確定診断になります。欠損の穴がどの場所に存在し、どの程度大きいのか、そして他の合併症がないかどうかが明らかとなります。右房、右心室が大きく肥大している場合、右房右心室の間の三尖弁にも負担が来て、弁の逆流が起こってないかが分かります。僧帽弁の逆流を合併することもあり、それもしっかり診断できます。

 

血液検査で何がわかる?

血液検査では特に分かりません。チアノーゼが来るほど重症あるいは末期の場合、心不全から来るさまざまな肝機能、腎機能の悪化を認める場合があります。

 

心臓カテーテル検査とは

血管の中にカテーテル(細い管)を入れて、心臓の心房、心室、肺動脈の圧と血液中の酸素濃度を測定します。本来酸素の少ない青い血液と酸素の多い赤い血液が右房と左房の間で交じり合います。すなわち右心房、右心室に酸素の多い左心房からの赤い血液が流入し血液酸素濃度が高くなります。この右心房、右室、肺動脈の酸素濃度を測定することによって、どの程度左房から右房へ流入するか(シャント)を計算します。本来直列でつながっているため、左心室、大動脈から全身に運ばれる血液量と、右心室、肺動脈から肺へ流れる血液量は同じですが、心房中隔欠損症の場合、全身に行くべき血液が右房に戻ってしまい肺への血流が多くなります。全身の体に行く血液量の何倍肺への血流があるかを肺体血流比といい、正常は1です。これが、1.5(~1.7)倍以上であれば肺への負担が高く手術をしたほうがいいといえます。また肺動脈の圧を測定し、それが正常以上に高い場合を肺高血圧といいますが、長い期間肺に血液が過度に多く流れていると、肺血管の圧が高くなってきます。そして血管が硬くなり血管抵抗も高くなります。そのため、肺の機能も落ちてきます。肺動脈の圧、血管抵抗を測定することは心房中隔欠損症によって肺血管および肺の機能がどの程度悪くなっているかが分かります。肺高血圧が進行して大動脈圧と同じくらいになった場合、手術をしても効果がないどころか進行して命を落とすこともあります。
このように、心臓カテーテル検査で心臓の中の酸素濃度、血流量、圧を測定し、心臓と肺がどの程度悪化しているかを判断し、手術は必要ないのか、手術をするべきか、手術できないほど手遅れなのかを評価します。

 

治療の必要があるのは

 

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・症状がはっきりある場合
・肺体血流比が1.5以上の場合
・心臓超音波で大きな穴(2cm以上)が存在し、右心房、右心室への負担がある場合

 

治療しない場合どういうことが

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右心房、右心室、肺の血流が多くなって、肺動脈の圧が上がります。肺動脈は過度の血流に耐えられなくなり血管が硬くなり血管抵抗が高くなります。これで肺への負担も過大となり呼吸困難などの症状がひどくなります。さらに肺血管の抵抗が高くなり、全身へ行く大動脈の血管抵抗より高くなると、逆に右心房から左心房に多く流れるようになります。酸素の少ない黒い血液が全身に流れることになりチアノーゼが出現します。さらに右心室、右房の負担も多く、右心不全として腹部膨満、全身の浮腫がでてきます。ここまで来ると末期状態であり、手術では症状の改善は見込まれず酸素治療、心肺移植が唯一の治療となります。ほとんどの心房中隔欠損症の患者さんがここまでなることはありませんので、病院で現在の状態を聞いて、自分で病状を把握することをお勧めします。
心房中隔欠損症の穴が小さい場合、多少肺への血流が多くなりますが、末期状態になることなく70,80台までお元気に過ごす方もいられます。

 

治療の方法は

穴が開いているのでそれを閉鎖するのが根本的治療です。方法は手術で穴を閉じるのが一般的です。

 

手術

胸を約12cm切開し、心臓を開けます。このとき心臓を止め、心臓内の血液もいったん空にするため人工心肺装置で全身の循環を維持させます。心臓を停止させて右心房をあけ、心房中隔欠損部を閉鎖します。直接閉鎖するか自分の体の組織(心膜)を使って閉鎖します。手術時間は合併手術、合併症がない場合は約2時間です。最近では右肋間小切開(MICS)での手術も可能です。

 

薬物療法

心臓、肺の負担をとったり、合併した不整脈の治療のための薬物療法がありますが、根本治療ではありません。

 

カテーテル治療

最近注目されており、いい器具が開発されて可能となる場合があります。

 

手術の時期は

各種検査方法で手術適応と言われた場合、手術する必要があります。決して緊急でするものではないので、手術を勧められてよく納得してから行うことをお勧めします。

 

手術の危険性は

人工心肺装置を取り付け、心臓を停止させますので、少なからず危険性はあります。心機能が一時的に悪化したり、不整脈を起こすこともあります。また、脳梗塞等の合併症も報告されています。いずれにせよ、心臓手術の中では難易度の低いほうですが、危険性もまったくないわけではありません。

 

手術後2週間で退院

合併症がない場合2週間で退院は可能です。2ヶ月で重労働の仕事も可能です。

 

手術で心臓はもとに戻る?

術前の心臓の状態、肺の状態によって回復度は違ってきます。いい時期に手術をした場合、症状も改善し、まったく正常の生活、運動が可能です。
心臓の弁に少し異常がある場合、不整脈がある場合、肺高血圧がひどく肺機能が改善しない場合は、改善に時間がかかることがあります。
左心室、大動脈の血流は生まれてから少なめであるため、心房中隔欠損症の患者さんの左心室、大動脈はすこしだけ楽をしてきました。そのため、左心室、大動脈のサイズは右心室や肺動脈に比べ小さくなっています。しかし、手術をすると、右房に逃げていた血液はすべて左房から左心室、大動脈へ流れるため、逆に左心室は負担となります。このため一時的に潜在的な左心不全状態が続き、しばらく症状として改善しない場合もあります。
手術後遠隔期にはもとの心臓に戻りますが、心機能の変化、弁膜症、不整脈、に対し定期的な検査は必要であると思います。無症状の場合でも年に1回の診察をお勧めします。

 

 

心室中隔欠損症(VSD)

 

心室中隔欠損症とは

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右心室と左心室の間に穴があいている生まれつきの病気です。最も多い先天性心疾患で、男女とも同じくらいの頻度です。約30%が2歳までに自然閉鎖します。自然閉鎖の90%は10歳までにおこります。本来混じりあうことのない右室と左室の血液がまじり、心臓そして肺に過度の負担のかかる病気です。赤い血液と黒い血液が混じりあい、右心室、肺のみならず左心室にも多くの血液が流れる病気です。心房中隔欠損症よりも小さいときに重症化し、幼児期、学童期にほとんど手術をする疾患ですが、穴が小さく大人になっても手術せずに元気にされる方もいます。

 

原因は

生まれつきのものです。遺伝的な証明はされていません。

 

心室中隔欠損症の症状は

通常は運動時の息切れ、動悸、風邪をひきやすい等です。

ひどい場合 : 呼吸困難、チアノーゼ(まれです)、全身の浮腫(まれです)

 

病院にかかる必要は

まず、検診で心室中隔欠損症の可能性がある場合、小さいときに心室中隔欠損症と診断された場合はかならず一度は病院に行って診断を受けることをお勧めします。息切れ等の症状がある場合ももちろん早めに医師に相談したほうがいいでしょう。
無症状でも定期的に検査(心臓超音波検査、レントゲン検査、心電図検査)をすることをお勧めします。

 

病院での診察、検査は

まず、お話を聞かせていただき、診察をさせていただきますが、それだけでは診断できません。心雑音は大人の場合はっきりと聞き取れる場合が多いです。その後、心電図検査、レントゲン検査、心臓超音波検査をさせていただき、心室中隔欠損症の診断そして程度の診断を行います。さらに、手術が必要な場合は、手術したほうがいいかどうか迷う場合、心臓カテーテル検査を行います。

 

心電図で何がわかる?

心室中隔欠損症は右房、右心室、肺に過度に多くの血液が流れ、負担が来る病気です。よって心電図では右心室負荷所見(右軸変位)、心房細動、右脚ブロック等および左心室負荷の所見が見られますが、心室中隔欠損症に特有というわけではありません。さらに上室性期外収縮、発作性頻脈、心房細動も起こりえます。

 

胸部レントゲン検査

スクリーニング、心臓、肺の状態を大まかに見るのに役立ちます。右房、右心室、左心室を含めた心臓の拡大、肺における肺動脈の拡張等が見られることがあります。この拡大、拡張の程度をレントゲンで見て、おおよその心室中隔欠損症の程度を推測することができます。

 

心臓超音波検査で何がわかる

心臓超音波検査で心室中隔欠損症を証明することができます。これが最終の確定診断になります。欠損の穴がどの場所に存在し、どの程度大きいのか、そして他の合併症がないかどうかが明らかとなります。右房、右心室が大きく肥大している場合、右房右心室の間の三尖弁にも負担が来て、弁の逆流が起こってないかが分かります。僧帽弁の閉鎖不全(逆流)と大動脈弁の閉鎖不全を合併することもあり、それもしっかり診断できます。

 

血液検査で何がわかる?

血液検査では特に分かりません。チアノーゼが来るほど重症あるいは末期の場合、心不全から来るさまざまな肝機能、腎機能の悪化を認める場合があります。

 

心臓カテーテル検査とは

詳しい内容は心房中隔欠損症の項を参照ください。カテーテル検査にて、どの程度血液が混じっているか、肺血管がどの程度傷害されているかを判定し、手術の必要性を判断します。

 

治療の必要があるのは

・症状がはっきりある場合
・肺体血流比が1.7以上の場合
・肺高血圧がひどい場合
です。

 

治療しない場合どういうことが

右心房、右心室、肺および左心室の血流が多くなって、肺動脈の圧が上がります。肺動脈は多い血流に耐えられなくなり血管が硬くなり血管抵抗が高くなります。これで肺への負担も過大となり呼吸困難などの症状がひどくなります。さらに肺血管の抵抗が高くなり、全身へ行く大動脈の血管抵抗より高くなると、逆に右心室から左心室に多く流れるようになります。酸素の少ない黒い血液が全身に流れることになりチアノーゼが出現します。さらに右心室、の負担も多く、右心不全として腹部膨満、全身の浮腫がでてきます。ここまで来ると末期状態であり、手術では症状の改善は見込まれず酸素治療、心肺移植が唯一の治療となります。ほとんどの心室中隔欠損症の患者さんがここまでなることはありませんので、病院で現在の状態を聞いて、自分で病状を把握することをお勧めします。
心室中隔欠損症の穴が小さい場合、多少肺への血流が多くなりますが、末期状態になることなくお元気に過ごす方も多くいられます。よって、手術の必要のない場合もあります。ただし、左心室から右心室への乱流により心室内にばい菌がくっつきやすくなります。心臓内に感染巣を認めたり、弁の破壊を起こすことがまれですがあります。抜歯などでは、抗生剤等の予防が必要です。医師にその旨を話し、相談してください。

 

治療の方法は

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穴が開いているのでそれを閉鎖するのが根本的治療です。方法は手術で穴を閉じるのが一般的です。

 

手術

胸を約12cm切開し、心臓を開けます。このとき心臓を止め、心臓内の血液もいったん空にするため人工心肺装置で全身の循環を維持させます。心臓を停止させて右心房をあけ、心室中隔欠損部を閉鎖します。直接閉鎖するか自分の心膜を使って閉鎖します。

 

薬物療法

心臓、肺の負担をとったり、合併した不整脈の治療のための薬物療法がありますが、根本治療ではありません。

 

手術の時期は

・症状がはっきりある場合
・肺体血流比が1.7以上の場合
・肺高血圧がひどい場合
です。
各種検査方法で手術適応と言われた場合、手術する必要があります。決して緊急でするものではないので、手術を勧められてよく納得してから行うことをお勧めします。

 

手術の危険性は

人工心肺装置を取り付けたり、心臓を停止させたりしますので、少なからず危険性はあります。心機能が一時的に悪化したり、不整脈を起こすこともあります。また、脳梗塞等の合併症も報告されています。いずれにせよ、心臓手術の中では難易度の低いほうですが、危険性もまったくないわけではありません。

 

手術後2週間で退院

合併症がない場合2週間で退院は可能です。2ヶ月で重労働の仕事も可能です。

 

手術で心臓はもとに戻る?

 

術前の心臓の状態、肺の状態によって回復度は違ってきます。いい時期に手術をした場合、症状も改善し、まったく正常の生活、運動が可能です。
心臓の弁に少し異常がある場合、不整脈がある場合、肺高血圧がひどく肺機能が改善しない場合は、改善に時間がかかることがあります。
手術後遠隔期にはもとの心臓に戻りますが、心機能の変化、弁膜症、不整脈、に対し定期的な検査は必要と思います。無症状の場合でも年に1回の診察をお勧めします。

 

 

エプスタイン奇形

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エプスタイン奇形は右房と右室の間にある三尖弁の付着する位置が右室側に少しずれ、三尖弁の逆流、右室の拡大などのある病気です。名前は恐ろしいそうですが、エプスタイン医師が発見した生まれつきの心臓病で、決して恐ろしい病気ではありません。8割に心房中隔欠損症を合併しています。この病気も、程度はさまざまで、三尖弁の位置の程度や機能の程度によって、新生児から重症になるものから、大人になってもほとんど症状のないものまであります。大人のエプスタイン奇形で重要になってくるのは、三尖弁の逆流がどの程度ひどいか、心臓がどの程度弱っているか、チアノーゼがないか、不整脈はないか、です。

 

診察

心雑音が聞こえることがよくあります。チアノーゼがないか等もチェックします。

 

心電図

右心室が肥大しているためそれを示す心電図所見が見られます。右軸変位、右脚ブロック、上室性不整脈、頻脈、心房細動等です。

 

胸部レントゲン写真

心臓の拡大が見られます。右心室、右房の拡大を示す特徴的な所見が見られます。

 

心臓超音波検査

心臓の形がはっきり分かり、これで診断が確定できます。三尖弁の位置と逆流の程度、右房、右室の大きさと形、心房中隔欠損他の合併奇形の診断が可能となってきます。

 

治療は必要?

症状のある場合は必要となります。息切れがする、おなかがはる、呼吸困難がある、チアノーゼがあるなどの場合は必要です。

 

投薬治療は

根本治療ではありませんが、手術が必要でないもの、手術不可能なほど重症の場合に行います。心臓の負担を取るため利尿剤等を処方します。不整脈に対して抗不整脈薬を投与します。

 

手術は

三尖弁の逆流を修復するか人工弁置換を行い、心房中隔欠損を閉じます。大きくなった右室を小さくすることもあります。

 

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三尖弁 人工弁置換 心房中隔欠損閉鎖

手術前にどの程度心臓が弱っているかによって、術後の回復度が影響されます。

 

動脈管開存症

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大動脈と肺動脈がつながっている病気です。先天性心疾患の10%と言われています。本来、大動脈の血液はすべて全身に流れていきますが、動脈管開存症では、大動脈から肺動脈に流れて空回りします。よって、肺の血流が増大し、左心室が拡大し最後に、心不全、呼吸不全となります。
診察では特有の心雑音が聞こえます。心臓超音波検査で、はっきりした診断がつきます。レントゲンでも心拡大、肺動脈の拡張などが認めます。心電図でも左心室の肥大所見を認めます。
症状としては動悸、息切れ、呼吸困難をみとめることが多いです。
小さな動脈管開存では小児期に手術せず、大人になることがありますが、将来心不全、心臓内の感染の危険性もあり、手術をお勧めします。
手術は胸を小さく開けて、つながっている血管を分離します。血管が石のように固くなっている場合は、人工心肺装置を使い、血圧を低く調節して安全に手術をおこなう場合もあります。

 

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造影CTでの動脈管開存症 肺動脈切開にて動脈管開存部を閉鎖

 

肺動脈狭窄症

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大人に見る先天性心疾患の10%程度を占める病気です。
肺動脈弁の開きが悪くなり、右室から肺動脈への血の流れに障害が来ることをいいます。狭窄の程度によって症状から治療法まで変わってきます。弁の開きが悪くなるとそこに圧差が生じます。本来は0mmHgですが、圧差が50mmHg以上であると、なんらかの症状が出現する場合が多く、また治療を必要とする場合がでてきます。
程度が軽いと無症状の場合もよくあります。症状としては息苦しさ、胸痛、疲労しやすい、ひどくなると失神も見られます。末期になると右心不全症状として、全身のむくみ、呼吸困難が見られます。
治療法はカテーテルでバルーンで拡げる方法が一般的です。程度が軽い場合には手術をする必要はなく、経過観察でお元気に過ごす場合もあります。無症状のまま心臓の機能が悪化したり、弁の狭窄がひどくなることもありますので、定期的な診察、検査をお勧めします。

 

 

バルサルバ洞動脈瘤破裂

バルサルバ洞動脈瘤破裂は、非常にめずらしい心臓病ですが、診断から治療まで確立し、適切な外科治療でお元気なる病気です。ほとんどが生まれつきですが、破裂して初めて症状がでる病気で、大人になって手術になる場合が多いです。

 

バルサルバ洞とは大動脈弁の直上にある大動脈の底の場所で、そこの壁が薄くなり、次第に瘤のように膨れてくるのをバルサルバ洞動脈瘤といいます。壁が薄くなるのはほとんどが生まれつきですが、血管の病気、動脈硬化、感染が原因のこともあります。

 

こぶのように膨れても(すなわち瘤になっても)、ほとんど心臓の機能に影響しませんが、動脈の圧に耐えかねて破裂すると、症状がでてきます。瘤の破裂によって大動脈の血液は右心室または右房に流入します。これによって、心臓への血流が増え、心不全をきたします。ショック状態になるほどの重症から、なんとなく息苦しい程度の軽症まであります。

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大動脈から見たバルサルバ洞動脈瘤 右室からみたバルサルバ洞動脈瘤
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診察

突然の息苦しさ、呼吸困難の症状を認め、特有の連続性雑音があれば、バルサルバ洞動脈瘤破裂を疑います。

 

胸部レントゲン写真

心臓の拡大、肺のうっ血すなわち心不全の所見が見られます。

 

心臓超音波検査

大動脈弁の直上に瘤の様なものが見え、血液が大動脈から右心室あるいは右房に異常に漏れているのを見て診断が確定できます。大動脈弁の逆流、他の心臓病の合併(心室中隔欠損症)の診断が可能となります。

 

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治療は必要?

破裂している場合は、まず心不全の治療をして落ち着いてから外科治療が必要となります。心不全治療が無効な場合の重症例は緊急での手術が必要ともなります。

 

手術は

大動脈と右心室を開けて、薄くなった瘤を切除し、パッチで閉鎖します。手術は約3時間ほどで終わります。

 

パッチで閉鎖

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術後は

修復がうまくいけば、術後は次第に回復し、元の心臓に戻ります。

 

 大動脈縮窄症

 

成人大動脈縮窄症とは

新生児から幼少期に発症する大動脈縮窄症(大動脈離断症)に比べて程度が軽いため成人で診断される大動脈縮窄症があります。そのままにしておくと高血圧による様々な合併症を若くして発症する場合がある病気です。弓部大動脈から下行大動脈にかけて低形成あるいは狭窄を来す病気です。

若いころから高血圧を指摘され偶然発見される場合や他の心臓病の時に偶然発見されることもあります。大動脈弓部の生まれつきの狭窄の程度によって症状や将来の経過が変わってきます。高血圧により心臓や脳の血管の動脈硬化が進行し将来心筋梗塞、弁膜症、脳梗塞などにかかりやすくなります。

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原因は

生まれつきのものです。遺伝的な証明はされていません。

 

成人大動脈縮窄症の症状は

症状はほとんどなく高血圧で見つかる場合があります。あるいは合併した心臓の病気によって出現する場合があります。 

 

病院にかかる必要は

 若くして高血圧がある場合にはその原因の一つとして大動脈縮窄症があるので病院で詳しい検査をお勧めします。

 

病院での診察、検査は

上肢と下肢の血圧で差があり、上肢の血圧が高い場合にはこの病気を疑います。超音波検査、造影CT検査で診断が可能です。 

 

心電図で何がわかる?
左室肥大所見を認めます。

 

胸部レントゲン検査

心拡大を認めることがあります。

 

心臓超音波検査で何がわかる

大動脈の狭窄を認める場合があります。

 

CT検査で何がわかる

造影CT検査で明らかになります。側副血行路(狭窄した大動脈の代わりに小さな血管が大きくなって下肢へ血流を送ること)の場所や程度が分かります。

 

心臓カテーテル検査とは

造影をして大動脈の狭窄の程度や圧差を測定します。造影CTで診断が十分可能なので最近はしないことが多いです。

 

治療の必要があるのは

難治性の高血圧で明らかな上下肢の圧差がある場合には 治療が必要です。

 

治療しない場合どういうことが

高血圧により心臓や脳の血管の動脈硬化が進行し将来心筋梗塞、弁膜症、脳梗塞などにかかりやすくなります。

 

治療の方法は

手術あるいはカテーテル治療です。

 

手術

狭窄の部分を人工血管で置換したり、バイパスする方法です。バイパスする方法が最近では勧められています。大動脈の病変の程度が合併している心臓病、大動脈の病気によって手術方法は様々です。 

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手術後の大動脈造影CT 人工血管でバイパスされています

 

カテーテル治療

カテーテルで風船あるいはステントを使用して狭くなっている大動脈を拡げます。侵襲が少ないですが、脆弱な血管なため出血したりあるいは再度狭窄を来す場合があります。

 

薬物療法

 高血圧の場合には降圧剤を使用しますが根本治療にはなりません。

 

手術の時期は

診断した場合はなるべく早くすることをお勧めします。 

 

手術の危険性は

 比較的安全な手術ですが、術後下肢麻痺、脳梗塞の危険性もあります。

 

手術後2週間で退院

 大きな合併症がなければ2週間で退院可能です。

 

手術後気をつけることは

手術で上肢と下肢の血圧に差が無くなればうまくいっている証拠です。高血圧が消失しますが小さいころからの高血圧による動脈硬化あるいは下肢の大動脈の低形成が理由で高血圧が残存する場合もあります。その時は降圧剤をしばらく使用します。また大動脈の異常で動脈瘤になることもあるのでCTでの経過観察が必要です。上肢と下肢の血圧を見ながら経過をみるのが重要です。

 

 

参考Medical Progress: Congenital Heart Disease in Adults? First of Two Parts
Brickner M. E., Hillis L. D., Lange R. A.
N Engl J Med 2000; 342:256-263, Jan 27, 2000. Review Articles