心臓病を理解しよう

最新の論文(LANCET, NEJM)で見る循環器診療の現状

Cover of Lancet, The NEJMindex
   

狭心症の患者さんで1枝病変に対して、それぞれ約100人のグループでカテーテル治療したグループと薬剤治療したグループでは治療効果に差がなかった。

Percutaneous coronary intervention in stable angina (ORBITA): a double-blind, randomised controlled trial. LANCET 2017

 

重症3枝病変と左主幹部病変の患者さんに対する冠動脈バイパス術とカテーテル治療を行ったそれぞれ約5000人のグループで検討した。冠動脈バイパス術の5年で9.2%がカテーテル治療5年で11.2%が死亡しており、有意に冠動脈バイパス術が良好であった。重症3枝病変では冠動脈バイパス術の方がさらに生存率も良好で特にに糖尿病患者さんでは良かった。左主幹部病変では同等の生存率であった。

Mortality after coronary artery bypass grafting versus percutaneous coronary intervention with stenting for coronary artery disease: a pooled analysis of individual patientdata. LANCET 2018

 

冠動脈バイパス術でグラフトとして内胸動脈の次に大伏在静脈グラフトと橈骨動脈グラフトを使用したそれぞれ500人のグループでの比較で橈骨動脈グラフトを使用した方がグラフトの開存が良好であったが死亡率では差はなかった。

Radial-Artery or Saphenous-Vein Grafts in Coronary-Artery Bypass Surgery.NEJM2018

 

腹部大動脈瘤の患者さんで開腹人工血管置換術をした患者さん約4万人とカテーテルによるステントグラフト内挿術を行った患者さん4万人で比較したところ、手術死亡率は開腹人工血管置換術5.2%ステントグラフト内挿術1.6%と開腹人工血管置換術が危険であった。長期の生存率は同じであった。その後再発で破裂した患者は開腹人工血管置換術1.4%ステントグラフト内挿術5.4%、再治療を行った患者は開腹人工血管置換術3.7%ステントグラフト内挿術18.8%とステントグラフト内挿術で長期の再発による危険性が高かった。

Long-Term Outcomes of Abdominal Aortic Aneurysm in the Medicare Population. NEJM 2015

 

腹部大動脈瘤の患者さんで開腹人工血管置換術をした患者さん約600人とカテーテルによるステントグラフト内挿術を行った患者さん約600人で15年間の長期成績を比較した。手術後半年以内での死亡率は開腹人工血管置換術7%ステントグラフト内挿術4%と開腹人工血管置換術が危険率が高いが、8年後以降では動脈瘤再発で死亡する確率は開腹人工血管置換術1%ステントグラフト内挿術7%とステントグラフト内挿術が悪かった。

Endovascular versus open repair of abdominal aortic aneurysm in 15-years’ follow-up of the UK endovascular aneurysm repair trial 1 (EVAR trial 1): a randomised controlled trial LANCET 2016

 

手術リスクの高い大動脈弁狭窄症患者さんをそれぞれ約350人で人工弁置換術と経カテーテル弁置換術(TAVR)で行ったところ、5年後の経過では死亡率は同じであった。弁の劣化はどちらもなかったが、弁の漏れによる逆流は人工弁置換術で1%だが経カテーテル弁置換術(TAVR)では14%とTAVRでは弁の漏れが心配であった。

5-year outcomes of transcatheter aortic valve replacement or surgical aortic valve replacement for high surgical risk patients with aortic stenosis (PARTNER 1): a randomised controlled trial LANCET 2015
 

虚血性心筋症の僧帽弁閉鎖不全症の患者さんを125人ずつの2グループに分け僧帽弁形成術と僧帽弁置換術を行った。2年後では死亡率は同じであった。弁逆流の再発は僧帽弁形成術で60%と僧帽弁置換術で4%と僧帽弁形成術が明らかに悪く心不全の再発も僧帽弁形成術で明らかに多かった。

Two-Year Outcomes of Surgical Treatment of Severe Ischemic Mitral Regurgitation NEJM2016

 

スウェーデンで糖尿病患者(1型4万人、2型45万人)の長期的調査をしたところ、死亡率、心臓血管病発生率は一般人よりも多いが、年とともにその発症率は年々減少しており、減少率は一般人より高い。2型糖尿病患者の心臓血管病発生率はの減少率はそれほどではない。

Mortality and Cardiovascular Disease in Type 1 and Type 2 Diabetes NEJM2017

 

大気汚染は動脈硬化になりやすい。大気汚染の程度と冠動脈の石灰化に関係があった。

Association between air pollution and coronary artery calcification within six metropolitan areas in the USA (the Multi-Ethnic Study of Atherosclerosis and Air Pollution): a longitudinal cohort study. LANCET 2016

 

古代の人間も動脈硬化はあった。4000年前のミイラを調べたところ動脈硬化は現代人と同じようにあった。

Atherosclerosis across 4000 years of human history: the Horus study of four ancient populations. LANCET 2013

 

スウェーデンの27万人の2型糖尿病患者さんの追跡をしたところ、他の合併症のない2型糖尿病だけの患者さんは心臓血管病のリスクはそれほどではなかった。

Risk Factors, Mortality, and Cardiovascular Outcomes in Patients with Type 2 Diabetes NEJM2018

 

禁煙で太って糖尿病になっても心臓血管病にはなりにくい。ー禁煙を行った場合体重増加により2型糖尿病になる危険があるが、5-7年でピークとなりその後落ち着く。体重増加に関係なく禁煙を行った場合は心臓血管病での死亡の危険は喫煙者より半分になる。ー

Smoking Cessation, Weight Change, Type 2 Diabetes, and Mortality NEJM2018

 

糖尿病患者さんにアスピリンを服用したグループは、心臓血管病になりにくいが消化管出血、脳出血になりやすい。

Effects of Aspirin for Primary Prevention in Persons with Diabetes Mellitus NEJM2018

 

高血圧患者さんを15年間追跡した結果、アムロジピン(カルシウム拮抗薬)を飲んだグループが他の降圧薬よりも心臓血管病のリスクが低かった。スタチンでの高脂血症薬も同様に心臓血管病のリスクを低下させた。

Long-term mortality after blood pressure-lowering and lipid-lowering treatment in patients with hypertension in the Anglo-Scandinavian Cardiac Outcomes Trial (ASCOT) Legacy study: 16-year follow-up results of a randomised factorial trial LANCET 2018

 

胸痛の患者さんを通常の経過観察をした群と冠動脈造影CT検査をした群で比較したところ通常の経過観察をした群の5年死亡率が3.9%で冠動脈造影CT検査をした群が2.3%であり、冠動脈造影CT検査をした群が低かった。

Coronary CT Angiography and 5-Year Risk of Myocardial Infarction NEJM2018