心臓血管外科手術について

はじめに

1998年(平成10年)に当院で心臓血管外科を開設して22年になりました。その間主要スタッフは変わらず、他に計5病院での心臓血管外科を開設しました。当院での手術総数は1万例を超えました。手術をさせていただいた患者さんの多くを当院外来、術後の会で見させていただき長期の術後経過も見させていただいております。多くの経験は手術技術の向上と維持に欠かすことはできません。心臓血管外科チームの医療技術をさらに高めて皆様により安心していただく手術をめざします。

 

図歴史

 

 

当院心臓血管外科の特徴

 

手術前の全身のケア

患者さんの今までのご病気、投薬内容、治療歴を聞かせていただき、全身CT検査、超音波検査等で術前状態を把握します。口腔内ケアー、リハビリを行い最善の状態で手術に臨みます。術前の気になるご病気を全科でチェックします。

 

総合病院による全身の管理

心臓手術を行う患者さんはご高齢が多く、他の病気を合併していることがあります。心臓や血管の調子が悪いと他の臓器にも影響します。脳、消化器、泌尿器、皮膚、眼、整形、歯科口腔等の多くの科の連携で他の臓器の合併症にも迅速かつ適切に対応します。

 

心臓外科麻酔専門医、集中治療専門医による管理

当院では心臓外科麻酔専門医が常時心臓外科麻酔を担当し、術後は集中治療専門医による的確な術後管理を行っています。

 

手術後の集中治療

24時間体制で集中治療専門医と心臓血管外科医師常駐にて術後の全身管理を行い急変にも対応します。最新のモニターとともに、年間300例近い心臓大血管手術の管理を慣れた看護師、コーメデイカルによる24時間管理を行います。

 

退院時のケア

手術後からの回復におけるケアーと退院後の生活の不安等に関して医師、看護師、リハビリ、ソーシャルワーカーでお手伝いします。

 

退院後もいつまでも対応

手術後はかかりつけの近くの病院クリニックと連携をとり、いつまでも患者さんとのつながりを続けます。年に1回のハート通信の配布、年1回の定期外来チェックを行い、急変時にも24時間体制で断ることなく対応いたします。

 

 

心臓血管外科手術は、大きく分けて心臓手術、胸部及び腹部大動脈手術、末梢血管手術、静脈手術があります。

病気に関する詳しい内容は心臓血管病を理解しようをご参考ください。

外来から入院手術に関する詳しい内容は外来から手術、退院までをご参考ください。

 

一般的な心臓手術では、前胸部を縦切開し、胸骨を切り、心臓に到達します。心臓弁膜症手術、胸部大動脈手術の場合、心臓を切開したり、静止させる必要があ るので人工心肺装置を使用して、心筋保護液で心臓の拍動を停止して手術をします。ただし冠動脈バイパス手術はほとんどの場合人工心肺装置を使用せず心臓を 動かしたままの手術が可能です。
当院では手術の皮膚の切開、胸の骨の切開を最小にする努力をしています。この方法により手術を受ける患者さんの負 担をなるべく少なくし、外見上も傷口が目立つことがないようにします。ご高齢の患者さん、他に合併症を持っておられ大きな手術では負担がかかる場合に この方法が有効になります。

最近では、胸の骨を全く切らない肋間小開胸手術(MICS手術)ダヴィンチロボット手術が主流となってきました。それにより、患者さんの侵襲も少なく回復も早く、退院も早くなってきています。

 

 

平均手術時間と入院日数

 

(当院での平均手術時間です。術中の状態によってはさらに手術時間が長くなることがあります。合併症によっては入院期間が長くなることがあります。)

 

手術   平均手術時間 入院日数
冠動脈バイパス術 1時間半(1枝)、2時間(2枝)、2時間30分(3枝) 7日間~2週間
心臓弁膜症 2時間半(1弁)、4時間(2弁) 10日間~2週間
腹部大動脈瘤 2時間(予定)、3時間(緊急) 7日間~2週間
胸部大動脈瘤 3時間~5時間 3週間~4週間
末梢血管手術 1時間(1バイパス) 4日間
静脈瘤手術 40分(1足) 2日(一泊二日)

 

手術をさせていただいたにもかかわらず命を救えなかった患者さん、合併症で後遺症を残された患者さんも少なからずおられます。患者さんご家族様はもとより紹介していただいた医療関係者の皆様に大変申し訳なく思います。多く経験と反省をさせていただいき、今後手術をさせていただく患者さんをより多く救命しお役にたてるように精進してまいります。