心臓血管外科手術について

TAVI 経カテーテル大動脈弁置換術

 

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当院でのTAVI治療

 

当院は経カテーテル的大動脈弁置換術関連学会協議会よりTAVI実施施設に認定されています。

 TAVI200

現在まで300例以上のTAVIを行いました(2023年8月現在)。

 

当院の成績(2021年7月)

 

手技成功率 99.5% (200/201)
関連死亡 (30日以内) 1.0%(2/201)
脳梗塞 1.0%(2/201)
急性冠動脈閉塞 0.5%(1/201)
外科手術への移行 1.0%(2/201)
ペースメーカー植え込み 15.0% (31/201)

 

 

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TAVIサイト ハイブリッド手術室

 

    1_エドワーズSAPIEN XT 生体弁 (23 mm) 4_エドワーズSAPIEN XT生体弁(留置)
TAVI用人工弁 大動脈に植え込まれた人工弁
   
11_経大腿アプローチ イラスト1 13_経大腿アプローチ イラスト2
大腿からのアプローチによる人工弁留置
 
12_経心尖アプローチ イラスト1 14_経心尖アプローチ イラスト2
心臓からのアプローチによる人工弁留置
 

TAVIについて

 

TAVIは2002年にフランスで始まり現在世界で10万人以上の患者さんに行われました。日本では2013年10月より保険診療で可能となりました。TAVIは厳しい審査に合格した限られた施設でのみ行われてます。当院でのTAVIの実施は8月より開始し、しばらくは日本、世界からTAVI治療の経験豊富な先生を招いて当院ハートチームと合同で行いました。

TAVIでは胸を切らず人工心肺装置での体外循環、心臓停止での手術ではないため患者さんの負担が極めて少ない治療法です。しかし、実際の大動脈弁を丁寧に切除して手縫いで装着する外科手術と違い、大動脈弁を一瞬で挫滅させて人工弁を固定させるため合併症も少なからずあります。脳梗塞、人工弁の隙間からの逆流、大動脈の出血、人工弁の移動、心筋梗塞等で5%程度の合併症と1-5%の死亡率と言われています。しかし人工弁、カテーテルの改良等によって合併症、死亡率は減少傾向にあります。

 

 外科手術とTAVIの比較

 

  外科手術 TAVI
方法 胸を10cm切開し人工心肺装置にて体外循環心停止をさせて硬くなった大動脈弁を切除し手縫いで人工弁を留置する 大腿あるいは胸に数センチの切開しカテーテルを挿入して人工弁を留置する
時間 2時間~3時間(当院) 1時間~2時間
術後 人工呼吸でICUにで数日管理して各種の管で管理 数時間後には食事、歩行も可能
入院 10日~2週間 3,4日
合併症 脳梗塞、出血、創感染 脳梗塞、人工弁の隙間からの逆流、大動脈の出血、人工弁の移動、心筋梗塞等
利点 確実な人工弁の機能 侵襲が少ない
欠点 侵襲が大きい 確実性に欠ける
適応 誰でも可能 手術が不可能な高齢者、合併症、解剖学的に不可能な場合もある
不適応 手術が不可能なほどの超高齢者、体力元気のない患者 解剖学的に不可能な場合、他の心臓疾患も手術しないといけない場合

 

適応になる患者さん

 

重症大動脈弁狭窄症(大動脈弁口面積が1cm2未満)

ご高齢(概ね75歳以上)

過去に心臓の手術をされて再手術が困難な患者さん

呼吸機能、肝機能等が悪く心臓手術が難しい患者さん

 TAVIの適応とならない患者さん

 

末期(予後1年以内)の悪性疾患

 

当院ではハートチームでのカンファレンスを行い慎重に適応を決めています。

術前検査として心臓超音波検査、造影CT検査、冠動脈造影検査を必須として他に全身臓器機能検査を行い治療が必要か、手術が可能かTAVIが可能かを判断してどちらの方法が最も適しているかを決めます。

 

当院のTAVIの特徴

 

①2つの人工弁を使いこなせる

 現在日本で使えるTAVI弁はSapienとEvolutの2種類があります。それぞれ形が違い、当然患者さんの弁周囲の解剖によりSapienが適した方、Evolutが適した方がいます。未だ日本ではSapienしか使えない施設が多くあります。当院は大阪大学と連携しているため、かなり早い段階でEvolutを取り入れることにより、数少ない指導医資格を持った医師が施行します。

sapien3-evolut

 

②valve in valveが可能

 すでに入っている外科弁の機能不全に対してTAVI弁を重ねて入れることのできる認定施設です。外科弁(生体弁)は10-15年が寿命と言われています。それにより再度弁膜症が悪化した方に対してTAVIを施行します。

valve_in_valve

 

③鼠径からのアプローチが困難な場合の別のアプローチの経験も豊富

 現在ほとんどTAVIは鼠径からアプローチしますが、患者さんの血管解剖上それが困難な方もいます。その場合左肩からや大動脈からによるアプローチ、小開胸によるアプローチを行う必要がありますが、日本でもっともそういったアプローチの経験数がある大阪大学と連携し、他の施設よりも安全に施行することができます。

 

④総合病院であるということ

 TAVI適応になる高齢の患者さんは多くの他の病気をお持ちです。心臓疾患以外にも糖尿病などの代謝疾患、肝・腎疾患、脳疾患、整形疾患など。必要時透析や他科との連携のもと多角的アプローチで治療を進めます。

 

⑤治療(TAVI)までが早い

大動脈弁狭窄症は重症となると早期に突然死したり、心不全を起こす疾患です。治療の遅れは死に直結します。当院では心臓外科、循環器内科、麻酔科、手術室スタッフを始め多くのコメディカルスタッフが密に連携し、迅速に治療計画を立てTAVI日程を確保するように努めております。緊急のTAVIも可能です。他院に比べフットワークが軽く緊急性・重症度の高い患者さんを素早く治療できるのは当院の特徴です。

 

⑥透析患者のTAVI施行可能

 

*日本で初めてTAVIを施行し、最多の症例数を誇る大阪大学と連携(同様のやり方を数年間現地で学んで、また悩ましい症例は相談)することによりできるだけ安全に行うことを心掛けています。